松本城の地震対策についてお知らせします
この度の熊本地震に伴い、多くの皆様が被害を受け、また熊本県民のシンボルである熊本城も甚大な被害を受けたことに、改めてお見舞いを申しあげます。
松本地方は、牛伏寺断層をはじめとする活断層があり、大規模な直下型地震の発生の可能性が指摘されています。平成23年6月30日の長野県中部を震源とする震度5強の地震の際は、松本城も天守の壁面にひびが入ったり、一部の石垣が破損し崩落のおそれが生じるなどの被害を受けました。
今回の熊本地震での熊本城の被害を受け、松本城の地震対策について、多くの皆様からご心配をいただきました。そこで、現在取り組んでいる松本城の地震対策についてご紹介します。
1 国宝松本城天守の耐震診断について
地震時の来場者の安全の確保と、文化財的価値の維持を目的として、平成26年度~28年度の3カ年で、国宝松本城天守(5棟)の耐震診断を実施しています。
これまでに地盤調査、天守の部材の調査、建物の地震時の揺れ方を把握するための振動調査等を実施しました。調査結果をもとに、震度6強~7の地震を想定した耐震診断を行い、耐震補強が必要な場合は補強案の策定を行うこととしています。
耐震補強が必要な場合は、文化庁・専門家の意見も聞きながら補強内容を決定し、工事を実施することとなります。あわせて老朽化した防災設備をはじめとした施設の改修、火災や地震等の災害を想定に入れた観光客動線・避難誘導計画・展示設備等の見直しについても検討を行います。これによって、大地震発生時の天守の倒壊を防ぐとともに、天守内のお客様が安全に避難できることを目指します。
2 天守の石垣について
天守5棟を支えている石垣(天守台石垣)は、平成26年度に詳細測量を行い、現状記録を行うとともに、石垣の変状の有無を確認しています。現時点では、崩落のおそれはそれほど高くありませんが、部分的に変状が確認されています。このため、石垣の積み石のすき間を埋める石(間詰石 まづめいし)の補充により、これ以上の変状の進行を抑えることを検討しています。
なお、大天守は石垣内部に設けられた土台支持柱に支えられており、昭和25年から30年にかけて実施した昭和の修理の際に、改修を行っています。このため、万が一天守台石垣が崩落しても、直ちに大天守が倒壊する危険性は低いものと考えております。
3 その他の石垣の修理について
石垣については、耐震診断や耐震補強についての決まった方法がないため、現状では石垣を健全な状態に保つことで、地震時を含めた安全性の確保を図ることとしています。松本城では、平成14~15年度に実施した石垣の破損状況等の調査結果に基づき、崩落の危険性の高い石垣から順次修理を行い、崩落を未然に防ぐようにしています。
これまでに、二の丸御殿跡西側の石垣や、平成23年の地震で被害を受けた埋門南側の石垣の解体修理を実施しました。平成27年度からは、経年劣化や石垣上の樹木の影響により崩落のおそれが生じている本丸北側の石垣の修理事業に着手しています。全長130mを超える石垣のため、今後10年程度を要する工事となりますが、石垣現況測量、工事設計等を実施し、平成29年度から順次石垣の解体修理工事を行う予定です。
4 黒門一ノ門の修理について
松本城本丸への入場口となる黒門一ノ門は、昭和35年に建築され、老朽化が進んでおり、屋根の葺き替え等の修理が必要となっています。また、黒門一ノ門を支えている石垣(黒門台石垣)も危険度が高いという調査結果となっています。このため、平成27年度に修理工事実施設計を行い、平成29年度に屋根の葺き替え、破損部材の補強、黒門台石垣の破損箇所の応急補強を実施する準備を進めています。
国宝及び史跡である松本城の天守、石垣等の保存と、お客様の安全確保のため必要な措置を着実に実施し、松本市のシンボルである松本城を最大限の努力をもって守ってまいりたいと考えております。皆様のご理解とご協力をお願い申しあげます。