松姫伝説
松姫は顔がみにくかったので、かわいそうに思った兄の徳川家康は、おおぜいの大名の前で「だれか、妹をもらってくれないか。もし男の子が産まれたら、10万石領地を増やそう。」といいました。戸田康長がちょっと顔を上げて、松姫を見てにこっとしました。それを見て家康は、康長を松姫との結婚を決めたということです。
この伝説は、事実とは、大きくちがっています。
松姫はとてもきれいな人でした。また家康は、6歳だった康長に家をつぐことを許し、5歳の松姫と結婚の約束をさせたのでした。康長と松姫の間には永兼という男子も生まれました。松姫は、24歳のとき二連木城(愛知県豊橋市)でなくなっていて、松本にきたことはありません。永兼は体が弱かったので、家をついだのは、永兼の母親ちがいの弟康直でした。その後、永兼は役職につくこともなく、40歳で松本でなくなりました。
弟康直が家を継いだころから、戸田家にいろいろな不幸なできごとが起こりました。康直は、兄永兼のたたりではないかとおそれ、これをしずめるために永兼の霊を陽谷霊社にまつりました。
それがいつのころからか、戸田家の不幸なできごとは、自分の子が殿様になれなかった松姫のくやしい思いが悪霊となって引き起こしたといわれるようになり、陽谷様が松姫のことであるように信じられるようになったのです。