松本城伝説

小笠原ぼたん

天文19年(一五五0)、甲斐の武田晴信が信濃国松本地域を支配していた小笠原長時おがさわらながときを攻めました。長時は林城(松本市入山辺)を捨て、北信濃の村上氏を頼りました。その時大事にしていた「白ぼたん」が敵に踏み荒らされるのを惜しみ、祈願所であった里山辺の兎川寺とせんじの住職に託して落ち延びていきました。それ以来、兎川寺檀家の久根下家が代々「殿様の白ぼたん」として守り続けてきました。

昭和になって、この話を久根下家の子孫が16代目の小笠原家当主である忠統ただむね氏に話したところ、いたく感激されました。こうして白ぼたんは400年以上の時を経て、林城の支城であった深志城改め松本城の本丸庭園に移植され、現在も見事な大輪を咲かせています。